鍼灸院の年間税務カレンダー【2026年版】
申告前提
個人事業主・12月決算を前提とし、青色申告特別控除65万円の適用を想定しています。
月別イベント
16件
鍼灸院を経営する個人事業主の皆様、日々の施術や患者様との信頼関係構築に忙しい中、経理・税務の管理は後回しになりがちではないでしょうか。この年間税務カレンダーでは、鍼灸院特有の税務上の注意点や、確定申告、各種届出のスケジュールを月別にわかりやすく解説します。保険診療と自由診療の区分、ディスポーザブル鍼の仕入れ、あはき法に基づく広告規制など、専門性の高い業務と並行して、計画的な経理処理を進めるための一助となれば幸いです。個別の税務判断については、税理士にご相談ください。
1月
年末年始の休診明けで患者さんの予約が落ち着き始める時期です。前年の経理処理の最終確認を進めましょう。
前年分の法定調書提出
税務署に提出する給与支払報告書や報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書など、前年分の法定調書を提出します。従業員や外部の専門家へ報酬を支払っている場合に必要です。
外部のはり師・きゅう師に業務委託費を支払っている場合は「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」の提出が必要です。
償却資産申告書の提出
固定資産税の対象となる償却資産(施術ベッド、高額な医療機器など)について、前年1月1日現在の所有状況を申告します。地方税のため、各市町村によって様式が異なります。
施術ベッド、滅菌器、レセプトコンピューターなど、高額な備品は償却資産の対象となることがあります。漏れなく申告しましょう。
2月
確定申告に向けて、医療費控除対象の領収書準備や、保険診療・自由診療の売上データ最終集計に集中しましょう。
所得税確定申告の準備
確定申告期間が始まります。青色申告決算書や所得税確定申告書を作成するため、売上帳、仕入帳、経費帳などの帳簿を最終確認し、必要書類を準備します。
保険診療収入(非課税)と自由診療収入(課税)の区分が正確か、ディスポーザブル鍼などの材料費の計上漏れがないか重点的に確認しましょう。
3月
今月確定申告の最終提出期限です。特に保険診療と自由診療の区分けが適切か再確認しましょう。
所得税確定申告・納付
前年1月1日から12月31日までの所得について、所得税の確定申告書を提出し、所得税を納付します。青色申告特別控除の適用を受ける場合は、青色申告決算書の添付が必要です。
保険診療収入は非課税売上、自由診療収入は課税売上として、消費税の課税事業者である場合は特に正確な区分が必要です。個別の税務判断は税理士にご相談ください。
個人事業税の申告
所得税の確定申告書を提出することで、個人事業税の申告も兼ねることがほとんどですが、別途申告書提出が必要な場合もあります。地域の税事務所に確認しましょう。
あん摩、マッサージ、指圧、はり、きゅう、柔道整復は個人事業税の対象となる「医業に類する事業」に該当します。事業主控除290万円がある点も考慮しましょう。
4月
確定申告が終わり、新たな気持ちで経営計画を見直す時期です。インボイス対応の状況も再確認しましょう。
新年度の経理体制確認
確定申告も終わり、新年度の経理体制や帳簿付けのルールが適切か確認する時期です。インボイス制度への対応状況も再確認し、必要に応じて仕入れ先への連絡などを行いましょう。
鍼・灸の卸業者からのインボイス受領状況や、決済サービスからの適格請求書発行事業者登録番号の確認など、インボイス関連のチェックは継続的に行いましょう。
労働保険料の申告・納付(従業員がいる場合)
従業員を雇用している場合、前年度の労働保険料(労災保険・雇用保険)の確定申告と、当年度の概算保険料の申告・納付が必要です。
鍼灸院で受付スタッフや他の施術者を雇用している場合に該当します。忘れずに手続きしましょう。
5月
ゴールデンウィークで患者さんの来院傾向が変わることも。連休中の売上と経費の変動を記録しておきましょう。
資金繰り計画の見直し
ゴールデンウィーク期間中の営業状況や患者さんの来院傾向を考慮し、中長期的な資金繰り計画を見直しましょう。特に、まとまった材料費の仕入れや設備投資の計画に役立ちます。
鍼灸院では鍼や灸の仕入れコストが定期的に発生します。在庫管理と合わせて、資金繰りへの影響を把握しておくことが重要です。
6月
梅雨時期は体調を崩しやすい患者さんが増える傾向があります。それに合わせた施術メニューや広報を検討し、経費計上を忘れずに。
消費税の中間申告・納付
前年の消費税額が48万円を超える課税事業者の方で、消費税の特例を受けていない場合、中間申告と納付が必要です。納付回数は前年の消費税額によって異なります。
自由診療の売上が多く、課税事業者となっている鍼灸院の方は特に注意が必要です。保険診療は非課税売上であるため、課税売上割合の計算も重要になります。
7月
夏に向けて冷え性改善や自律神経の不調を訴える患者さんが増える時期です。上半期の経理状況を振り返り、下半期に備えましょう。
源泉所得税の納付(納期特例対象者)
従業員が10人未満の事業所が承認を受けている場合、1月から6月までの源泉所得税をまとめて納付します。毎月納付している場合は対象外です。
受付スタッフや他の施術者を雇用している鍼灸院で、納期特例の承認を受けている場合に該当します。納付漏れがないよう注意しましょう。
8月
お盆期間中は休診や営業時間の変更があるかもしれません。それに伴う売上や人件費の変動を把握しておきましょう。
個人事業税の第1期納付
都道府県税事務所から送付される納税通知書に基づき、個人事業税の第1期分を納付します。通常は8月末が期限です。
鍼灸院経営者は個人事業税の対象となるため、納税資金を計画的に確保しておきましょう。
9月
季節の変わり目で体調を崩しやすい時期。患者さんのニーズに合わせた施術材料の仕入れや、セミナー参加費用の計上を検討しましょう。
インボイス対応状況の再確認
インボイス制度への対応状況を定期的に見直す良い機会です。仕入れ先からの適格請求書保存、自身が発行する請求書の要件充足など、漏れがないか確認しましょう。
はりきゅう師会へのレセプト請求委託料や、鍼・灸卸業者からの仕入れなど、課税仕入れに関するインボイスの管理は特に重要です。
10月
秋の深まりとともに、冷え性や関節の痛みなど、新たな症状を訴える患者さんが増える時期です。施術メニューの拡充や関連経費の確認を。
年末調整の準備開始(従業員がいる場合)
従業員を雇用している場合、年末調整の準備を始めます。扶養控除等申告書や保険料控除申告書などの書類を従業員に配布し、回収する準備を進めましょう。
鍼灸院でパート・アルバイトの受付スタッフを雇用している場合も年末調整の対象となります。早めに準備を始めましょう。
11月
年末に向けて患者さんの駆け込み需要が増える傾向があります。年末調整の準備も進め、来年の経営計画を立て始めましょう。
個人事業税の第2期納付
都道府県税事務所から送付される納税通知書に基づき、個人事業税の第2期分を納付します。通常は11月末が期限です。
年間で2回の納付があるため、忘れずに資金を確保し、納付期限を守りましょう。
12月
年末は多くの患者さんが来院する繁忙期です。同時に、来年の税務に備え、年内の経費計上漏れがないか最終確認を行いましょう。
年末調整(従業員がいる場合)
従業員から回収した書類に基づき、所得税の過不足を精算します。対象となる従業員全員分の年末調整を完了させましょう。
年末調整は従業員の雇用形態(正社員、パートなど)に関わらず、給与を支払っている場合に義務付けられています。正確な処理を心がけましょう。
決算準備
年度末の最終的な経費計上漏れがないか確認し、棚卸資産(鍼、灸、消毒液などの在庫)の評価を行います。来年の確定申告に向けた最終準備を進めましょう。
ディスポーザブル鍼やもぐさなど、使い捨ての材料は棚卸資産となります。年末の在庫を確認し、正確な棚卸高を計上することが重要です。
年間まとめ
鍼灸院の税務は、保険診療と自由診療の売上区分、ディスポーザブル鍼などの材料費管理が特に重要です。年間を通して、適切な帳簿付けとインボイス制度への対応を継続し、確定申告期には余裕を持って準備を進めることが、健全な経営の基盤となります。特に、施術所開設届や広告規制など、税務以外の行政手続きも多いため、全体像を把握し計画的に対応しましょう。個別の税務判断については、税理士にご相談ください。
確定申告に向けた準備スケジュール
年間を通じた領収書・請求書の整理、クラウド会計ソフトへの入力状況の確認
保険診療と自由診療の売上集計、材料費や広告宣伝費など主要経費の集計と分類
医療費控除対象額の確認、固定資産台帳の更新、減価償却費の計算、青色申告決算書の作成開始
所得税確定申告書・青色申告決算書の最終確認と提出、個人事業税の申告
プロのアドバイス
- 保険診療(非課税)と自由診療(課税)の売上は、日々のレジ締め時や会計ソフト入力時に明確に区分けし、消費税の計算基礎を常に意識しましょう。
- ディスポーザブル鍼、もぐさ、消毒液などの施術材料費は「仕入高」として適切に計上し、仕入れ先からのインボイス保存を徹底してください。
- 医師の同意書取得にかかる費用(患者負担でない場合)や、はりきゅう師会へのレセプト作成手数料は「支払手数料」として処理しますが、消費税の課否判定に注意しましょう。
- 施術所開設届や、あはき法に基づく広告規制関連費用は「開業費」や「広告宣伝費」として計上できますが、広告内容が規制に抵触しないよう常に確認が必要です。
- 高額な施術ベッドや滅菌器、レセプトコンピューターは減価償却資産となります。購入時の金額と耐用年数を把握し、適切な減価償却処理を行いましょう。
免責事項:この情報は一般的な参考情報であり、個別の税務判断を提供するものではありません。具体的な税務上の判断については、税理士等の専門家にご相談ください。