経理・税務ガイド

有料老人ホームの年間税務カレンダー【2026年版】

申告前提

本カレンダーは、法人運営(株式会社など)で12月決算を前提としています。個人事業主や異なる決算月の場合は、適宜読み替えてください。

月別イベント

15

有料老人ホームの運営は、大規模な投資と多岐にわたるサービス提供が特徴です。介護保険サービスと保険外サービスが混在し、入居一時金の会計処理、高額な設備投資に伴う減価償却、多職種の人件費管理など、経理・税務は非常に複雑になりがちです。年間を通して必要な税務申告や届出をカレンダー形式で把握し、適切なタイミングで対応することで、スムーズな施設運営と安定した経営基盤を築きましょう。

1月

年末調整後の事務処理が集中する時期です。大規模な施設ほど、従業員数や業務委託先の確認に時間がかかります。

最重要

償却資産税申告

固定資産税の対象となる償却資産(建物附属設備、厨房設備、介護ベッドなど)を市区町村に申告します。高額な設備投資が多い有料老人ホームでは特に重要です。

毎年1月31日市区町村

エレベーターや業務用厨房設備、特殊な介護設備など、一般的な事業所よりも多額の償却資産を保有するため、漏れなく申告することが重要です。

償却資産申告書
重要

法定調書合計表・給与支払報告書の提出

前年分の給与所得の源泉徴収票や報酬・料金等の支払調書を税務署に提出します。介護職員、看護職員、業務委託の医師など多職種の人員が多い施設では準備が必要です。

毎年1月31日税務署、市区町村

給食委託、清掃委託、医療連携サービスなど、外部への業務委託が多い場合、支払調書の提出が必要となるケースがあります。

給与所得の源泉徴収票報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書法定調書合計表

2月

重要

決算準備の本格化

法人税・消費税申告に向け、帳簿の最終確認、固定資産台帳の照合、棚卸資産の評価(食材料など)を行います。特に消費税の課税売上割合の計算は重要です。

3月申告に向けた準備自社

介護保険サービスは非課税、食費・家賃・自費サービスは課税と売上が混在するため、消費税の課税売上割合の計算と仕訳の正確性が求められます。

総勘定元帳固定資産台帳棚卸表

3月

今月

年度末の決算業務で経理部門が最も多忙になる時期です。特に大規模施設では、膨大な取引データの集計と確認が必要です。

最重要

法人税・消費税申告・納付

12月決算の法人は、法人税、法人事業税、法人住民税、消費税の申告と納付を行います。高額な建設費や設備投資による減価償却費の計上も適切に行います。

原則として決算日から2ヶ月以内(翌年2月末日)ですが、法人税等は延長申請により3ヶ月以内(翌年3月末日)に延長可能です。消費税の申告期限延長は一般的ではありません。税務署、都道府県、市区町村

入居一時金の会計処理(償却額や預り金の区分)や、資本的支出と修繕費の区分は、税務調査で指摘を受けやすい点です。税理士と綿密に連携しましょう。

法人税申告書消費税申告書決算書

4月

新年度予算と実績の確認

新年度が始まり、策定した予算と実際の経営状況を比較し、必要に応じて事業計画や経費の見直しを行います。

随時自社

入居者募集の進捗や介護保険外サービスの利用状況が収益に直結するため、月次でのきめ細やかな分析が重要です。

事業計画書月次損益計算書

5月

重要

固定資産税・都市計画税(第1期)納付

土地や建物に対する固定資産税・都市計画税の第1期分の納付期限です。有料老人ホームは土地・建物が高額なため、多額の納税が発生します。

市区町村が定める期限市区町村

都市部の施設では特に高額になるため、納税資金の確保を計画的に行いましょう。

納税通知書

6月

年末調整後の事務処理が集中する時期です。大規模な施設ほど、従業員数や業務委託先の確認に時間がかかります.

この月の主要な税務イベントはありません。

7月

重要

労働保険料の年度更新・納付

前年度の労働保険料の確定申告と納付、および新年度の概算保険料の申告と納付を行います。従業員数が多い有料老人ホームでは毎年必須の手続きです。

毎年7月10日まで労働基準監督署、ハローワーク

介護スタッフ、看護スタッフなど多職種の人件費が多い施設では、正確な賃金集計が求められます。

労働保険料等算定基礎賃金集計表労働保険概算・確定保険料申告書
重要

源泉所得税・住民税の納付(納期特例適用者)

納期特例の承認を受けている場合、1月から6月までの源泉所得税と住民税をまとめて納付します。従業員の給与から天引きした税金です。

毎年7月10日税務署、市区町村

人件費が経営の大部分を占めるため、徴収した源泉税の管理は厳格に行いましょう。

納付書

8月

中間決算準備・収益状況の確認

中間申告が必要な法人は、中間決算に向けた準備を進めます。入居者の増減や介護保険外サービスの利用状況を確認し、年間の収益見込みを調整します。

随時自社

入居率の変動が収益に大きく影響するため、定期的な入居者募集活動の成果を評価し、経営戦略に反映させることが重要です。

月次試算表

9月

重要

法人税・消費税中間申告・納付

法人税、法人事業税、法人住民税、消費税の中間申告と納付を行います。前年度の実績や予定納税額に基づき計算されます。

事業年度開始から6ヶ月経過後2ヶ月以内税務署、都道府県、市区町村

消費税の中間申告では、課税売上割合の変動を考慮に入れる必要があります。特に新規の課税サービスを開始した場合は注意が必要です。

中間申告書

10月

重要

固定資産税・都市計画税(第3期)納付

土地や建物に対する固定資産税・都市計画税の第3期分の納付期限です。

市区町村が定める期限市区町村

多額の納税を伴うため、資金繰り計画に含めておくことが重要です。

納税通知書

11月

重要

年末調整の準備開始

従業員から扶養控除等申告書や保険料控除申告書などを回収し、年末調整の準備を始めます。介護施設は従業員数が多いため、早めの着手が必要です。

随時自社

介護職員、看護職員、事務員など、多数の従業員を抱えるため、書類の回収漏れがないよう、余裕を持ったスケジュールで進めましょう。

扶養控除等申告書保険料控除申告書 兼 配偶者特別控除申告書

12月

年末調整と同時に、翌年の決算準備も意識し始める時期です。特に大規模施設では、早めの準備が年明けの業務負担を軽減します。

重要

年末調整の実施

従業員の給与から天引きした所得税の過不足を精算します。過不足額は12月または翌年1月の給与で調整します。

毎年12月中税務署

年末調整は従業員の生活に直結するため、正確かつ迅速な処理が求められます。

源泉徴収簿

消費税の課税事業者選択届出書等の提出

翌々年度から消費税の課税事業者となることを選択する場合、この時期が届出期限となります。インボイス制度への対応を見据え、検討が必要です。

課税事業者の適用を受けようとする課税期間の開始の日の前日まで税務署

介護保険サービスは非課税売上ですが、課税売上となる自費サービスや物品販売がある場合、インボイス制度への対応は必須です。

消費税課税事業者選択届出書

決算棚卸の実施

食材料や介護用品などの棚卸しを実施し、期末在庫を確定させます。正確な原価計算に不可欠です。

決算日自社

入居者の数や介護度に応じて消耗品の使用量が変動するため、定期的な在庫管理が重要です。

棚卸表

年間まとめ

有料老人ホームの運営における年間税務は、法人税・消費税申告、償却資産税、固定資産税、労働保険料の更新など多岐にわたります。特に、非課税売上と課税売上の区分、入居一時金の会計処理、高額な固定資産の減価償却費計上、インボイス制度への対応は、有料老人ホーム特有の重要なポイントです。計画的な準備と専門家との連携で、正確な税務処理を行いましょう。

確定申告に向けた準備スケジュール

1

試算表の確認と大きな費用の計上漏れがないかチェック。特に高額な修繕費が資本的支出でないか精査。

2

固定資産台帳と実物を照合し、減価償却計算の基礎となる情報を確認。入居一時金の償却額を計算。

3

消費税の課税売上割合を仮計算し、簡易課税制度の適用可否やインボイス対応状況を確認。最終的な勘定科目の整理。

4

決算書と申告書を作成し、税理士の最終確認を受ける。納税資金の確保と納付手続き。

プロのアドバイス

  • 入居一時金は、一時預り金、数年かけて償却される権利金、償却されない保証金など種類があり、それぞれ会計処理が異なります。税理士と密に連携し、適切な区分と計上方法を確立しましょう。
  • 介護保険サービスは非課税ですが、食費、家賃相当額、日常生活費、自費サービスの一部は課税対象です。消費税の課税売上割合の計算や、適格請求書(インボイス)発行・受領の管理を徹底してください。
  • 施設建設費やエレベーター、厨房設備など高額な固定資産が多い有料老人ホームでは、減価償却費が多額になります。資本的支出と修繕費の区分を正確に行い、適切な耐用年数で償却しましょう。
  • 給食委託、清掃委託、リネンサプライなど外部委託サービスを多く利用する場合、仕入税額控除のためには適格請求書(インボイス)の確実な受領と保存が不可欠です。委託先との契約時に確認しましょう。
  • 介護スタッフ、看護スタッフ、生活相談員など多職種の人材を抱えるため、人件費管理が経営の要です。給与計算、社会保険手続き、年末調整は正確に行い、税務署や年金事務所への届出も漏れなく実施しましょう。

免責事項:この情報は一般的な参考情報であり、個別の税務判断を提供するものではありません。具体的な税務上の判断については、税理士等の専門家にご相談ください。