映像制作の年間税務カレンダー【2026年版】
申告前提
個人事業主・12月決算を前提としていますが、法人の方にも参考になる内容を含みます。
月別イベント
33件
映像制作事業を営む皆様にとって、日々のクリエイティブ活動に集中するためには、経理・税務の年間スケジュールを把握しておくことが不可欠です。本カレンダーは、映像クリエイターや制作会社が直面しやすい確定申告、消費税申告、源泉徴収、インボイス制度への対応、さらには高額な撮影機材やソフトウェアの減価償却、ドローン関連の届出といった、映像制作ならではの税務イベントを網羅しています。年間を通して計画的に準備を進め、税務上のリスクを回避しましょう。個別の税務判断は税理士にご相談ください。
1月
法定調書合計表の提出
前年分の報酬・料金等の支払調書を含め、法定調書を税務署へ提出します。特にフリーランスのカメラマンや編集者、ナレーターへの外注費は源泉徴収対象となるため注意が必要です。
MAエンジニアやモデルへの報酬も源泉徴収の対象となることがあります。支払調書作成時には、業務委託契約書と照合し、報酬の種類を確認しましょう。
償却資産申告書の提出
固定資産税の対象となる事業用償却資産(カメラ、レンズ、ドローン、編集用PCなど)を市区町村へ申告します。漏れがないよう、固定資産台帳と照合しましょう。
10万円以上の機材は固定資産となります。少額減価償却資産の特例(30万円未満)を利用している場合でも、償却資産税の対象となるため申告が必要です。
インボイス制度対応状況の最終確認
インボイス制度開始から時間が経過し、取引先との適格請求書発行・受領状況を確認します。特に免税事業者との取引における仕入税額控除の適用状況を見直しましょう。
動画素材サイトやBGMサイトの利用料も適格請求書発行事業者からのものか確認し、仕入税額控除の可否を判断しましょう。
2月
確定申告書類の最終準備
所得税確定申告に向けて、領収書、請求書、通帳データ、クレジット明細などを最終確認し、会計ソフトへの入力漏れがないかチェックします。
撮影現場での飲食費(会議費)、ロケ地の交通費(旅費交通費)、撮影小道具代(消耗品費)など、プロジェクトごとの経費を細かく分類できているか確認しましょう。
減価償却資産の計上確認
前年に取得した高額なカメラ、レンズ、高性能PC、ドローンなどが適切に減価償却資産として計上され、償却計算がされているかを確認します。
取得価額10万円未満の機材は消耗品費として一括計上できますが、それ以上のものは減価償却が必要です。少額減価償却資産の特例(30万円未満)の適用要件も再確認しましょう。
源泉徴収税額の最終確認
外注費から源泉徴収した所得税の合計額と、支払調書に記載した金額が一致しているか最終確認します。不足がないか、過徴収がないかチェックしましょう。
特に年間を通して多数のフリーランスに依頼している場合、一人ひとりの源泉徴収額の集計に誤りがないか注意が必要です。
3月
今月所得税の確定申告
前年1月1日から12月31日までの所得について、所得税の確定申告書を提出し、納税します。青色申告決算書も忘れずに作成しましょう。
自宅を簡易スタジオや編集室として使用している場合、家賃や光熱費の家事按分を忘れずに行いましょう。按分率の合理的な根拠を説明できるように準備が必要です。
消費税の確定申告
消費税の課税事業者である場合、前年分の消費税の確定申告書を提出し、納税します。インボイス制度により仕入税額控除の計算が複雑化しているため、特に注意が必要です。
適格請求書発行事業者からの仕入れと、免税事業者からの仕入れを明確に区別し、仕入税額控除の計算ミスがないように再確認しましょう。
予定納税額の納付(第1期)
前年の所得税額が一定額以上の場合、今年の所得税の一部を前払いする予定納税の第1期分を納付します。
映像制作はプロジェクトごとに収入が変動しやすい業種です。予定納税額が多いと感じる場合は、管轄の税務署に相談し減額申請を検討することも可能です。
4月
新年度の事業計画と予算策定
確定申告が終わり、新たな年度の始まりです。年間を通しての撮影案件、機材購入、人材計画などを踏まえた事業計画と予算を策定しましょう。
ドローンなどの高額機材の購入を検討している場合、減価償却や償却資産税の観点から、購入時期や資金計画を慎重に検討しましょう。
ドローン情報登録の確認・更新
事業用ドローンを所有している場合、国土交通省への情報登録の有効期限を確認し、必要に応じて更新手続きを行います。
ドローンのバッテリーやプロペラなどの消耗品は定期的に交換が必要です。その費用は消耗品費として計上できます。
会計ソフト・経費精算システムのレビュー
新年度に合わせて、利用している会計ソフトや経費精算システムの設定や運用状況を見直しましょう。効率化できる点がないか確認します。
映像制作はプロジェクト数が多く、領収書も多岐にわたるため、クラウド会計や連携ツールを最大限活用し、入力負担を軽減することが重要です。
5月
プロジェクト別経費の中間レビュー
年度前半に実施した各プロジェクトの収支を中間レビューします。特に外注費、ロケ地費用、素材使用料などが予算内に収まっているか確認しましょう。
動画素材サイトやBGMサイトの月額・年額費用は、複数のプロジェクトで共用されることが多いため、按分や共通費としての処理を検討しましょう。
業務委託契約書の見直し
フリーランスのカメラマンや編集者、ナレーターなどとの業務委託契約書の内容を定期的に見直します。特に源泉徴収の要否や報酬体系に変化がないか確認しましょう。
著作権や肖像権に関する条項が明確になっているか、トラブルを避けるためにも再確認が重要です。
ポートフォリオ制作費の計上確認
自社プロモーション用の映像やポートフォリオ制作にかかった費用(機材レンタル費、モデル費など)が広告宣伝費として適切に計上されているか確認します。
受注に繋がらなかった企画提案の費用も、広報活動の一環として広告宣伝費や研究開発費に計上できる場合があります。個別の判断は税理士に相談してください。
6月
予定納税額の納付(第1期)
所得税の予定納税を行っている場合、その年の所得税の一部である第1期分を納付します。
上半期の売上が計画より大きく変動した場合は、税務署に相談して予定納税額の減額申請を検討することも可能です。特に大規模な案件が予定より遅れるケースなど。
上半期決算の見込み確認
上半期の収支状況を把握し、年間の利益見込みを立てます。これにより、下半期の事業戦略や設備投資計画を調整できます。
編集用ハイスペックPCや新たなカメラレンズなど、高額な機材の購入を検討する良い時期です。減価償却の観点も考慮に入れましょう。
7月
源泉所得税の納付(納期特例適用者)
源泉所得税の納期特例を受けている場合、1月から6月までの源泉徴収税額を一括して納付します。外注費からの源泉徴収分も含まれます。
フリーランスのクリエイターへの外注費からの源泉徴収は忘れやすい項目です。報酬支払時に源泉徴収額を控除し、適切に管理しましょう。
労働保険の年度更新
従業員を雇用している場合、労働保険料の年度更新手続きを行います。
短期のアルバイトやアシスタントを雇用した場合でも、労働保険の対象となる場合があります。雇用形態に応じた適切な手続きが必要です。
消費税の中間申告・納付
前年度の消費税額が一定額を超えた場合、中間申告と納付が必要になります。直前の課税期間の確定消費税額に基づいて計算されます。
映像制作事業は売上が大きく変動する可能性があるため、中間申告の対象となるか、納税額がいくらになるかを確認しておきましょう。
8月
撮影機材の定期メンテナンス計画
夏季の繁忙期を前に、カメラ、レンズ、照明、編集用PCなどの機材のメンテナンス計画を立てます。故障は思わぬ出費や納期遅延につながります。
メンテナンス費用は修繕費として計上可能です。高額な修理の場合は、資本的支出と修繕費の区分に注意し、税理士に相談してください。
クラウドストレージ利用状況の見直し
大容量の映像データを扱うため、クラウドストレージ(Google Drive, Dropboxなど)の利用状況や費用を見直します。コスト最適化とデータ管理の効率化を図りましょう。
通信費として計上されるこれらの費用は、事業用とプライベート用で按分が必要な場合があります。
ソフトウェアライセンスの確認
Adobe Creative CloudやDaVinci Resolve Studioなどの編集ソフトのライセンス期間や更新日を確認します。継続利用に必要な費用を把握しましょう。
月額・年額のソフトウェア利用料は支払手数料やソフトウェア利用料として経費計上可能です。年間一括払いの場合は期間按分が必要な場合もあります。
9月
年末に向けた経費・税金対策の検討
年末調整や確定申告を視野に入れ、残り数ヶ月の経費計上や税金対策を検討します。事業年度末に向けて計画的に準備を進めましょう。
事業拡大のための機材購入や、新しいソフトウェアの導入など、高額な投資を検討する時期です。購入時期によって減価償却の計算が変わる場合があります。
著作権・BGM利用許諾の再確認
過去のプロジェクトで使用したBGMや素材の利用許諾期間、著作権処理が適切に行われているか再確認します。特に長期利用や再編集の可能性がある案件について注意が必要です。
JASRACやNexToneへの使用料支払いが必要なケースもあります。利用規約を熟読し、適切な処理を行いましょう。使用料は支払手数料等で計上可能です。
10月
インボイス制度開始1周年後の状況確認
インボイス制度開始から1年が経過し、取引先との関係性や適格請求書発行・受領における課題がないか改めて確認し、必要に応じて対応策を検討します。
免税事業者からの仕入れが多い場合、2割特例などの経過措置が適用できるか、または新たな取引先の開拓を検討しましょう。
年末の経費計上計画
年末に向けて、消耗品費(SDカード、バッテリーなど)、ソフトウェア利用料、広告宣伝費など、年内に計上すべき経費の見積もりと計画を立てます。
来年度のプロジェクトで使用するストック素材やBGMの年間契約を年末に更新することで、その費用を当期の経費として計上できる場合があります。
旅費交通費の精算状況確認
撮影現場への移動費やロケ地の下見、出張費など、発生した旅費交通費の精算が適切に行われているか確認します。未精算がないよう注意しましょう。
プロジェクトごとに発生する交通費は、その都度記録し、プロジェクト費用として明確に紐付けておくことが重要です。
11月
予定納税額の納付(第2期)
所得税の予定納税を行っている場合、その年の所得税の一部である第2期分を納付します。
年間の売上が当初の予測より大幅に変動した場合、この時期に税理士と相談し、予定納税額の減額申請を検討することも有効です。
年末調整の準備(従業員がいる場合)
従業員を雇用している場合、年末調整の準備を開始します。各種控除証明書(生命保険料控除、地震保険料控除など)の収集を促しましょう。
フリーランスのクリエイターは年末調整の対象外ですが、従業員を雇っている場合は適切な手続きが必要です。
12月
年末調整の実施
従業員を雇用している場合、年間の給与所得に対する所得税を精算する年末調整を実施します。
年末調整は従業員の税金計算に直結するため、間違いがないよう慎重に進めましょう。特に年の途中で入社した従業員の処理に注意が必要です。
年内最終経費計上と棚卸し
年内に支払いを済ませるべき経費(ソフトウェア年間契約料、素材サイト利用料など)を確認し、計上します。また、事業用消耗品などの棚卸しを行います。
来年度の案件で使う予定のSDカード、バッテリー、撮影小道具などを年内に購入すれば、当期の消耗品費として計上可能です。ただし、過度な駆け込み購入は避けましょう。
翌年確定申告に向けた準備開始
翌年3月の確定申告に向けて、この1年間の領収書や請求書の整理、会計ソフトへの入力漏れの確認など、早期に準備を開始しましょう。
プロジェクトごとに経費を紐付けて管理できていれば、確定申告時の集計作業が格段に楽になります。クラウド会計ソフトの活用も検討しましょう。
年間まとめ
映像制作事業の年間税務カレンダーは、確定申告、消費税申告、源泉徴収といった一般的な税務に加え、高額な撮影機材の減価償却、ドローン関連の届出、著作権・肖像権に関する費用処理など、この業界特有の注意点が多く存在します。計画的な経理処理と、必要に応じた専門家への相談が、安定した事業運営の鍵となります。
確定申告に向けた準備スケジュール
会計ソフトへの入力漏れチェック、領収書・請求書の整理を開始。特に高額機材の購入履歴や外注先への支払履歴を確認。
固定資産台帳の確認と減価償却計算の見込み立て。源泉徴収義務がある外注費の集計と支払調書の準備。
青色申告決算書(または損益計算書・貸借対照表)の作成。消費税の課税事業者であれば、仕訳と仕入税額控除の計算確認。
確定申告書・消費税申告書の最終確認と提出。納税資金の準備と納付手続き。
プロのアドバイス
- 高額機材は減価償却の対象:カメラ本体、高性能PC、ドローンなど10万円以上の機材は固定資産として減価償却します。少額減価償却資産の特例(30万円未満)の適用も検討し、購入時期と合わせ税理士に相談しましょう。
- 外注費の源泉徴収を徹底:フリーランスのカメラマン、編集者、ナレーターへの報酬は、原則として源泉徴収(所得税10.21%)が必要です。徴収漏れは追徴課税の対象となるため、契約時に確認し、支払時に控除を忘れずに行いましょう。
- 著作権・肖像権関連費用も経費に:BGMやストック素材の利用料、モデル・タレントの肖像権使用料などは、支払手数料や消耗品費として適切に計上できます。許諾契約書を保管し、使用目的との整合性を明確にしておきましょう。
- 自宅兼スタジオの家事按分を忘れずに:自宅の一部を編集作業スペースや簡易スタジオとして利用している場合、家賃、電気代、通信費などを事業利用割合に応じて家事按分し、経費計上しましょう。合理的な按分率の設定が重要です。
- プロジェクトごとの収支管理を徹底:複数の映像案件を同時進行する場合、各プロジェクトで発生する撮影機材レンタル費、ロケ地交通費、外注費などを細かく紐付けて管理することで、正確な利益把握と確定申告時の効率化が図れます。
免責事項:この情報は一般的な参考情報であり、個別の税務判断を提供するものではありません。具体的な税務上の判断については、税理士等の専門家にご相談ください。