歯科医院の年間税務カレンダー【2026年版】
申告前提
個人事業主・12月決算を前提
月別イベント
26件
歯科医院を経営する上で、税務に関する年間スケジュールを把握することは非常に重要です。高額な医療機器の減価償却、保険診療と自費診療の消費税区分、多岐にわたる歯科材料費の管理など、歯科医院特有の経理・税務処理は複雑になりがちです。本カレンダーでは、2026年の税務イベントを月別に整理し、特に注意すべきポイントを解説します。適切な税務処理は、健全なクリニック経営の基盤となります。
1月
年末年始の休診期間明けでレセプト業務が再開し、年間の税務処理のスタートを切る月です。
前年分の法定調書提出
給与支払報告書、不動産賃貸料等の支払調書を税務署や市区町村に提出します。歯科衛生士や歯科助手の給与に関する情報も含まれます。
従業員を雇用している歯科医院は必須です。年末調整時に集めた情報がベースとなります。
償却資産申告書の提出
固定資産税の対象となる医療機器(歯科ユニット、CT、レントゲンなど)や、内装造作などの償却資産について、市区町村に申告します。
高額な医療機器が多い歯科医院にとって重要な申告です。漏れなく正確に申告しましょう。
源泉所得税の納付(納期特例適用者)
前年7月~12月分の源泉所得税を税務署に納付します。納期特例の承認を受けている事業主が対象です。
歯科衛生士や歯科助手など従業員の給与から源泉徴収した所得税の納付です。
2月
確定申告の準備で多忙になる時期です。計画的に進めないとレセプト業務と重なり負担が大きくなります。
所得税の確定申告準備
領収書、通帳、レセプトデータ、棚卸リストなど、確定申告に必要な書類の整理と会計ソフトへの入力を本格化させます。
保険診療と自費診療の売上区分、高額な医療機器の減価償却費計算が重要です。
消費税の確定申告準備
課税事業者である場合、消費税の申告準備を進めます。保険診療は非課税、自費診療は課税売上となるため、仕訳の正確性が求められます。
インボイス制度導入後、課税仕入れの適格請求書(インボイス)の保存状況も確認しましょう。
3月
今月確定申告の最終期限であり、年度末のレセプト業務と重なるため、最も多忙な時期の一つです。
所得税の確定申告・納税
前年分の所得税の確定申告書を税務署に提出し、納税します。青色申告決算書も合わせて提出が必要です。
高額な医療機器の減価償却費や、歯科材料の棚卸し計上漏れがないか最終確認しましょう。
消費税の確定申告・納税
課税事業者である場合、前年分の消費税の確定申告書を提出し、納税します。インボイス制度の影響も考慮が必要です。
自費診療売上が多い歯科医院は特に注意が必要です。仕入れに係る消費税額の計算も重要です。
4月
新生活が始まる季節で、患者さんの来院傾向も変化する可能性があります。
新年度の事業計画・予算策定
前年度の決算を踏まえ、新年度の診療計画、設備投資計画、人員計画、予算を策定します。
歯科ユニットやCTなどの高額医療機器の導入計画は、資金計画や減価償却に直結します。
医療機器の購入検討
新規開業や既存クリニックの増床・リニューアルに伴い、歯科ユニットやCT、滅菌器などの購入を検討します。
リースと購入のどちらが良いか、税務上のメリット・デメリットを税理士に相談してください。
5月
ゴールデンウィークがあり、休診期間の設定や患者さんの予約調整が求められる時期です。
自動車税の納付
訪問診療などで使用する車両がある場合、自動車税を納付します。経費計上を忘れずに行いましょう。
自家用車を事業に兼用している場合は、家事按分を適切に行う必要があります。
前年度確定申告内容の見直し
確定申告後、会計データや決算書を改めて確認し、課題や改善点がないか振り返りを行います。
医療広告ガイドラインに沿った広告費の計上や、レセプト業務の効率化なども検討しましょう。
6月
ボーナス支給時期と重なることが多く、人件費管理が重要になります。
労働保険料の申告・納付準備
前年度の労働保険(労災保険・雇用保険)の保険料を計算し、申告・納付の準備を進めます。
歯科衛生士や歯科助手など従業員の雇用形態に応じた正確な計算が必要です。
7月
夏季休暇の取得が増える時期ですが、税務・労務の重要な手続きが集中します。
源泉所得税の納付(納期特例適用者)
1月~6月分の源泉所得税を税務署に納付します。納期特例の承認を受けている事業主が対象です。
半年に一度の納付のため、金額が大きくなりがちです。資金計画に含めておきましょう。
労働保険の年度更新・納付
労働保険料の申告と納付を行います。従業員の入退社や給与の変動を反映させます。
歯科業界は離職率が高い傾向があるため、正確な従業員情報の管理が求められます。
所得税の予定納税(第1期)
前年分の所得税額が一定額以上の場合、本年の所得税の一部を前払いします。税務署から通知書が届きます。
業績が大幅に変動した場合は、予定納税額の減額申請を検討できる場合があります。
8月
お盆期間があり、休診にするか通常通り診療を続けるかによって、売上や人件費に影響が出ます。
スタッフの給与・シフト調整
夏季休暇取得に伴う歯科衛生士や歯科助手の給与計算、シフト調整を行います。
人員不足になりがちなため、早めの調整が重要です。
医療機器の保守点検費用
歯科ユニットや滅菌器など、医療機器の定期点検や修理費用を計上します。法定点検が必要な機器もあります。
保守契約を結んでいる場合は、支払手数料や保守管理費として適切に処理しましょう。
9月
秋の診療シーズンに入り、患者さんの来院が増加傾向になることがあります。
所得税の予定納税(第2期)
前年分の所得税額が一定額以上の場合、本年の所得税の一部を前払いします。第1期と同様に通知書が届きます。
下期の診療計画や自費診療の売上見込みを考慮し、資金繰りを計画しましょう。
医療法人化検討
事業規模が拡大してきた場合、個人事業主から医療法人への移行を検討する時期です。税理士や専門家への相談を開始します。
医療法人化は事業税非課税などのメリットがありますが、手続きが複雑で数年計画で進める必要があります。
10月
インフルエンザなどの感染症が流行し始める時期で、感染対策費(消耗品費)が増える傾向にあります。
年末調整の準備開始
従業員から扶養控除等申告書などを回収し、年末調整に必要な情報の収集を開始します。
歯科衛生士や歯科助手の異動が多い場合、漏れがないよう早めに準備を始めましょう。
歯科材料の仕入れ計画
年末の棚卸しを見据え、レジン、セメント、麻酔薬、印象材などの歯科材料の仕入れ計画を立てます。
消耗性の高い材料が多く、仕入れ量と期末棚卸資産のバランスが重要です。
11月
年末に向けて患者さんの来院が増える傾向があり、診療と経理業務のバランスが重要です。
年末調整の計算開始
従業員の給与支払額や社会保険料、生命保険料控除などの情報を元に年末調整の計算を進めます。
複雑な計算は税理士に依頼するか、会計ソフトの機能を活用しましょう。
来年度の設備投資計画
確定申告を見据え、来年度の歯科ユニットやCTなどの高額医療機器の導入計画を具体化します。節税対策も考慮に入れます。
医療機器導入は多額の費用がかかるため、十分な検討と税理士への相談が必要です。
12月
年末年始の休診期間に入るため、その前に経理業務をできるだけ進めておくことが賢明です。
年末調整の実施と源泉徴収票発行
年末調整を完了させ、従業員に源泉徴収票を交付します。来年の確定申告の基礎となります。
パート・アルバイトを含め、全ての従業員に対して正確な処理が求められます。
消費税の課税事業者選択届出書等の提出期限
翌々年から課税事業者になることを選択する場合や、免税事業者に戻る場合など、消費税の届出書を提出します。
自費診療の売上増加やインボイス制度への対応を考慮し、慎重に判断しましょう。
医療材料の棚卸し準備
期末の棚卸資産を正確に把握するため、レジン、セメント、麻酔薬などの医療材料の棚卸しを行います。売上原価に直結します。
棚卸しを怠ると、正確な利益計算ができず、税務調査で指摘される可能性があります。
年間まとめ
歯科医院の年間税務は、高額な医療機器の減価償却や、保険診療・自費診療の売上区分、多量の歯科材料の棚卸しが特徴です。特に、確定申告期にはこれらの特殊性を踏まえた正確な申告が求められます。日々のレセプト業務と並行して、計画的な経理処理を進めることが、税務調査対策や経営状況の正確な把握に繋がります。
確定申告に向けた準備スケジュール
確定申告資料の整理開始(領収書、通帳、レセプトデータ、棚卸リスト等)
医療機器の固定資産台帳の確認と減価償却費の計算準備
会計ソフトへの入力完了、試算表の作成。税理士との最終確認
所得税・消費税の確定申告書提出、納税
プロのアドバイス
- 高額な歯科ユニットやCTなどの医療機器は、適切な耐用年数で減価償却費を計上しましょう。少額減価償却資産の特例や、特別償却制度の適用も検討し、税理士に相談してください。
- 保険診療収入は非課税売上、自費診療収入は課税売上となるため、帳簿上で明確に区分管理し、消費税の計算を誤らないようにしましょう。インボイス制度対応も自費診療の売上に関わります。
- レジンやセメント、麻酔薬などの歯科材料は、期末に棚卸しを行い、正確な在庫評価額を計上することが売上原価の適正化に不可欠です。購入時に消耗品費として一括計上しないよう注意が必要です。
- 歯科衛生士や歯科助手の採用難から人件費が高騰傾向にあります。給与計算、社会保険料、源泉徴収の適正な処理と、年末調整時期の準備を怠らないようにしましょう。
- 開業前に発生した賃貸契約費用や内装工事費の一部は「開業費」として繰延資産に計上し、償却することが可能です。計上漏れがないか、必ず税理士に確認してください。
免責事項:この情報は一般的な参考情報であり、個別の税務判断を提供するものではありません。具体的な税務上の判断については、税理士等の専門家にご相談ください。