経理・税務ガイド

訪問看護ステーションの年間税務カレンダー【2026年版】

申告前提

個人事業主・12月決算を前提

月別イベント

12

訪問看護ステーションを運営する皆様にとって、多忙な業務と並行して税務・経理を正確に遂行することは不可欠です。本カレンダーでは、個人事業主の訪問看護ステーションを前提に、2026年に必要となる主な税務申告・届出のスケジュールを解説します。複雑な介護報酬・医療報酬の請求業務に加え、人材確保やオンコール体制の維持など特有の課題を抱える中で、計画的な税務処理は経営の安定に直結します。適切な経費計上や届出漏れを防ぎ、健全な事業運営を支援するための羅針盤としてご活用ください。

1月

年末調整後の書類整理と、確定申告に向けた経費の最終確認を始める時期です。介護報酬・医療報酬の年間集計も進めましょう。

最重要

前年分の法定調書提出

給与支払報告書や報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書など、前年中に支払った報酬に関する書類を税務署に提出します。

1月31日まで税務署

業務委託契約の理学療法士や作業療法士への報酬がある場合、支払調書の提出が必要になります。外注費か給与かの判断は慎重に行いましょう。

給与支払報告書報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書
重要

償却資産申告書の提出

固定資産税の対象となる償却資産(社用車、医療機器、事務機器など)を所有している場合、その資産状況を市町村に申告します。

1月31日まで市町村役場

訪問看護ステーションでは社用車や訪問バッグ内の医療機器、ICTシステムなどが対象となることが多いです。購入時の金額と取得年月日を正確に記録しておきましょう。

償却資産申告書

2月

確定申告の準備が本格化します。訪問時のガソリン代や駐車場代など、移動経費の領収書・記録を整理し、私用と事業用の区別を明確にしましょう。

最重要

所得税確定申告の準備

所得税の確定申告期間が始まります。青色申告決算書や収支内訳書の作成、控除書類の準備など、申告書類の最終確認を行います。

2月16日から税務署

介護保険・医療保険の収入は非課税売上ですが、自費サービス(介護保険外サービス)は課税売上となり、インボイス対応事業者であれば消費税の申告も必要になる場合があります。

青色申告決算書所得税確定申告書B

3月

今月

確定申告のピークです。期限に間に合うよう、余裕を持った提出・納税を心がけましょう。申告後は、事業計画の見直しや次年度の税務対策に着手する良い機会です。

最重要

所得税確定申告

前年分の所得税の確定申告書を提出し、納税します。青色申告特別控除65万円を適用するためには、複式簿記による記帳とe-Taxでの提出が必要です。

3月15日まで税務署

オンコール手当や緊急時訪問手当など、従業員への特殊な手当の計上が適切か、最終確認しましょう。個別の経費計上については税理士に相談してください。

所得税確定申告書B青色申告決算書
最重要

消費税申告・納税

課税事業者である場合、前年分の消費税の確定申告書を提出し、納税します。インボイス制度により、仕入れにかかる消費税の控除要件が変更されています。

3月31日まで税務署

介護保険・医療保険サービスは非課税売上ですが、自費サービスや物品販売があれば課税売上となります。課税仕入れの適格請求書(インボイス)の保存状況を確認しましょう。

消費税確定申告書

4月

新年度が始まり、事業所の運営体制や人員配置の見直しを行う時期です。新たに雇用する看護師がいる場合は、社会保険・労働保険の手続きも忘れずに行いましょう。

この月の主要な税務イベントはありません。

5月

介護報酬改定や医療報酬改定に関する情報収集を行い、請求業務への影響を確認します。研修計画を立て、スタッフのスキルアップを支援することも重要です。

この月の主要な税務イベントはありません。

6月

上半期の収支状況を確認し、下半期の事業計画や採用計画を練る時期です。特に訪問看護師の採用は難航しやすいため、計画的な採用活動が求められます。

重要

予定納税額の通知

前年の所得税額が一定額以上の場合、税務署から予定納税額の通知書が届きます。第1期分は7月31日までに納税が必要です。

6月中旬頃通知税務署

利用者数の増加や特定事業所加算の取得により収益が大幅に伸びた場合、予定納税額も高くなる傾向があります。資金繰りを考慮して準備しましょう。

予定納税額の通知書

7月

税務署からの予定納税額通知書の内容を確認し、資金計画を立てましょう。労働保険の年度更新も忘れずに行い、従業員の雇用状況を再確認します。

最重要

源泉所得税の納付(納期特例適用者)

従業員が10人未満で「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を提出している場合、1月〜6月分の源泉所得税をまとめて納付します。

7月10日まで税務署

オンコール手当や緊急出動手当など、給与以外の特殊な手当も源泉徴収の対象です。計算ミスがないか注意しましょう。

所得税徴収高計算書(納付書)
重要

労働保険の年度更新

労働保険料(労災保険・雇用保険)の年度更新手続きを行い、前年度の確定保険料を精算し、新年度の概算保険料を納付します。

7月10日まで労働基準監督署またはハローワーク

看護師の給与は比較的高水準であるため、労働保険料の負担も大きくなります。正確な賃金集計が重要です。

労働保険料等算定基礎賃金集計表
重要

所得税の予定納税(第1期分)

前年分の所得税額が15万円以上の場合、予定納税額の1/3を納付します。納税額が減少しそうな場合は、減額申請も可能です。

7月31日まで税務署

利用者獲得が予想より進まない、あるいは人材確保に高額な費用がかかった場合など、事業状況によっては納税額の減額申請を検討しましょう。

予定納税額の通知書

8月

夏の繁忙期を迎え、オンコール体制の負担が増える時期です。スタッフの健康管理や福利厚生についても配慮し、離職率低下に努めましょう。

この月の主要な税務イベントはありません。

9月

BCP(事業継続計画)の策定義務化に対応するため、非常時の対応マニュアルや連絡体制の見直しを行います。災害時の利用者ケア継続は重要な課題です。

この月の主要な税務イベントはありません。

10月

年末調整の準備を始める時期です。従業員の扶養控除等申告書や保険料控除申告書を収集し、確認作業を進めましょう。

重要

所得税の予定納税(第2期分)

所得税の予定納税額の2/3を納付します。第1期と同様に、事業状況に応じて減額申請も可能です。

10月31日まで税務署

訪問看護ステーションの収益は季節変動が少ないものの、新規利用者獲得の状況や加算取得状況によって変動します。実際の収益と予定納税額に乖離がないか確認しましょう。

予定納税額の通知書

11月

年末に向けて、介護保険・医療保険の請求漏れがないか、返戻分が適切に処理されているかを確認します。記録システムを活用し、効率的な管理を心がけましょう。

この月の主要な税務イベントはありません。

12月

一年間の締めくくりです。年末調整を終え、翌年の確定申告に向けた準備を開始します。特に訪問車両の維持費や医療消耗品費など、細かな経費の領収書整理が重要です。

最重要

年末調整

従業員に支払った給与について、過不足のある所得税額を精算します。各種控除の適用漏れがないよう、書類を正確に確認しましょう。

12月末日税務署

訪問看護師は、夜勤やオンコール手当など、時間外手当が多く発生することがあります。給与計算と源泉徴収が正確に行われているか、改めて確認しましょう。

給与所得者の扶養控除等申告書給与所得者の保険料控除申告書
最重要

源泉所得税の納付(納期特例適用者)

10人未満の従業員がいる場合、7月〜12月分の源泉所得税をまとめて納付します。年末調整で確定した過不足額もここで精算します。

1月10日まで(翌年)税務署

年末調整の結果を反映した源泉徴収税額を正しく計算し、納付しましょう。税理士に相談することをお勧めします。

所得税徴収高計算書(納付書)

年間まとめ

訪問看護ステーションの年間税務は、確定申告と消費税申告が主な山場となります。介護報酬・医療報酬の非課税売上と、自費サービスの課税売上、そして多岐にわたる経費の適切な仕訳が重要です。特にオンコール手当や交通費、医療消耗品費など、事業特性に応じた経費管理を徹底し、計画的な資金準備と正確な帳簿付けを心がけましょう。

確定申告に向けた準備スケジュール

1

訪問看護記録や領収書の整理・データ入力の開始。特に交通費は走行記録と突き合わせ。

2

給与明細、源泉徴収票、社会保険料納付額などの必要書類を収集。従業員がいる場合は年末調整の準備。

3

会計ソフトへの入力完了と試算表作成。青色申告決算書(または収支内訳書)の作成を開始。

4

確定申告書Bの作成と最終確認。e-Taxでの提出準備。税理士へ最終チェックを依頼。

プロのアドバイス

  • 訪問時のガソリン代や駐車場代は、私用との区別を明確にするため、走行記録や訪問日報と紐付けて管理しましょう。専用の車両費科目で集計し、効率的な経費計上を目指してください。
  • 特定事業所加算や24時間対応体制加算など、取得要件を満たしたら速やかに届出を行いましょう。これらの加算は介護報酬の増収に直結し、経営安定化に大きく寄与します。
  • オンコール手当や緊急出動手当は、従業員への給与として源泉徴収の対象となります。業務委託契約の看護師との区別を明確にし、税務上のリスクを避けるため、契約内容と実態が一致しているか定期的に確認してください。
  • 介護保険・医療保険の請求ミスによる返戻や未収金は、適切に管理し、不良債権として処理する必要があります。定期的にレセプトチェックを行い、未収金計上や貸倒処理を検討しましょう。
  • 介護記録システムや勤怠管理システムなどのICT導入費用は、IT導入補助金などの対象となる場合があります。補助金情報を常にチェックし、経営効率化と負担軽減を図りましょう。

免責事項:この情報は一般的な参考情報であり、個別の税務判断を提供するものではありません。具体的な税務上の判断については、税理士等の専門家にご相談ください。