就労継続支援A型・B型の年間税務カレンダー【2026年版】
申告前提
個人事業主・12月決算を前提
月別イベント
27件
就労継続支援A型・B型事業所の運営は、利用者の支援と同時に複雑な経理・税務処理が伴います。特に、障害福祉サービス報酬の非課税性、利用者への賃金(A型)と工賃(B型)の会計処理の違い、送迎車両や作業材料費の管理など、業界特有の注意点が多く存在します。この年間税務カレンダーは、個人事業主の皆様がスムーズに事業運営できるよう、2026年の主要な税務イベントと、就労継続支援事業ならではのポイントを月別にまとめました。計画的な準備で、安心して事業に専念できるようサポートします。
1月
年末調整が完了し、新たな年度の経理処理が始まります。利用者への賃金・工賃明細の発行準備も進めましょう。
前年分の法定調書提出
税務署に提出する法定調書(給与支払報告書、報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書など)の作成・提出を行います。A型事業所の利用者への賃金も対象となる場合があります。
A型事業所の利用者への賃金も給与所得として源泉徴収・支払報告の対象となるため、正確な賃金計算と報告が必要です。
償却資産申告書の提出
事業用の固定資産(土地家屋を除く車両、機械、器具備品など)の状況を市区町村へ申告し、固定資産税(償却資産税)の課税対象を確定します。送迎車両や訓練用設備も忘れずに。
送迎車両、訓練用機械器具、福祉ソフトなどは償却資産の対象です。取得価額や取得年月日を正確に記載しましょう。
源泉所得税・復興特別所得税の納付(納期特例なしの場合)
前月(12月)に源泉徴収した所得税を税務署に納付します。納期特例の承認を受けていない場合は毎月納付が必要です。
サービス管理責任者など業務委託契約の報酬も源泉徴収の対象となる場合があるため、契約内容を確認し適切に対応しましょう。
2月
確定申告の準備で最も忙しい時期です。特に障害福祉サービス報酬と課税売上の区別には細心の注意を払いましょう。
確定申告準備の本格化
前年分の売上や経費をまとめる時期です。帳簿の記帳漏れがないか確認し、領収書や請求書、預金通帳など、確定申告に必要な書類を整理しましょう。
障害福祉サービス報酬は非課税売上、作業請負は課税売上と区別し、帳簿に正確に記録することが重要です。A型事業所の賃金台帳も最終確認を。
サービス管理責任者研修計画の見直し
事業運営に不可欠なサービス管理責任者の配置基準や資格要件を確認し、研修受講計画を立てる時期です。費用は研修費として計上可能です。
サービス管理責任者の研修費用は重要な経費です。また、資格要件の変更がないか、常に最新情報を確認しましょう。
3月
今月税務申告の最終期限が集中する月です。特に消費税の申告では、非課税売上である障害福祉サービス報酬の取り扱いに誤りがないか再確認しましょう。
所得税確定申告
前年分の所得税の確定申告書を税務署に提出し、納税します。青色申告特別控除65万円の適用を受ける場合は、複式簿記での記帳が必須です。
A型事業所の賃金は給与所得、B型事業所の工賃は原則非課税ですが、高額な場合は雑所得として申告が必要なケースがあります。この経費を落とせるかは税理士に相談してください。
個人事業税申告
事業所得に対して課される個人事業税の申告です。所得税の確定申告書を提出すれば、原則として別途申告は不要です。
障害福祉サービス事業は原則として非課税事業ですが、作業請負など課税対象となる事業活動がある場合は、個人事業税の対象となることがあります。
消費税の確定申告
消費税の課税事業者である場合、前年分の消費税の確定申告書を税務署に提出し、納税します。障害福祉サービス報酬は非課税売上であることに注意しましょう。
障害福祉サービス報酬は非課税売上ですが、作業請負による売上や物品販売は課税売上です。課税売上割合によって仕入れに係る消費税の控除額が変動するため、区分経理が重要です。
4月
新年度の始まりです。利用者や職員の体制を整えつつ、年度当初の重要な事務手続きを滞りなく進めましょう。
個別支援計画の見直し・作成
新年度が始まり、利用者の個別支援計画を定期的に見直し、必要に応じて新規作成や更新を行います。これは報酬請求の根拠となります。
個別支援計画はサービス提供の基本であり、報酬加算の要件にも関わります。サービス管理責任者を中心に適切に運用しましょう。
障害福祉サービス報酬請求(前月分)
前月分のサービス提供実績に基づき、国民健康保険団体連合会(国保連)に報酬を請求します。請求漏れや誤りがないよう細心の注意が必要です。
請求システム(カイポケ等)の入力ミスは返戻につながります。特に加算の要件を満たしているか、日々記録を確認しましょう。
5月
労働保険の年度更新に向けた準備が始まります。職員だけでなく、A型事業所の利用者への賃金も考慮して正確な計算を心がけましょう。
固定資産税・都市計画税の納付(第1期)
土地や建物などの固定資産を所有している場合、市区町村から送付される納税通知書に基づき、固定資産税・都市計画税を納付します。
事業所用の不動産も対象です。事業用と個人用で按分している場合は、その割合を確認しましょう。
労働保険料の申告・納付準備
前年度の労働保険料の確定申告と、新年度の概算保険料の申告・納付に向けた準備を行います。職員の給与額を把握し計算を進めましょう。
A型事業所の利用者への賃金も労働保険料の算定対象となる場合があるため、賃金台帳を正確に管理することが重要です。
6月
上半期の締めくくりに入ります。事業運営に関する行政への報告準備も進め、日々の記録を再確認しましょう。
住民税の納付(普通徴収第1期)
前年分の所得に対する住民税の納付書が送付されます。普通徴収を選択している場合は、年4回に分けて納付します。
事業主自身の住民税です。特別徴収(給与天引き)の場合は、従業員の住民税を納付します。
事業所運営状況報告書の作成準備
都道府県や市区町村に対し、事業所の運営状況(利用者数、職員配置、活動内容など)を報告する書類の作成準備を行います。
障害福祉サービス事業の指定を受けている事業所は、定期的な報告義務があります。日々の記録を正確に残すことが重要です。
7月
上半期の税務処理の山場です。特に納期特例を利用している場合は、源泉所得税の納付を忘れずに行いましょう。
源泉所得税・復興特別所得税の納付(納期特例適用の場合)
1月から6月までに源泉徴収した所得税をまとめて納付します。納期特例の承認を受けている場合のみ年2回の納付となります。
A型事業所の利用者への賃金や職員給与、業務委託の報酬など、源泉徴収対象の支払いを漏れなく集計しましょう。
労働保険の年度更新
前年度の確定保険料と新年度の概算保険料を申告・納付します。正確な賃金総額の把握が重要です。
A型事業所の利用者の賃金も労働保険料の対象となるため、漏れなく計算に含めましょう。B型事業所の工賃は原則として対象外です。
個人事業税の第1期納付
前年分の所得に対する個人事業税の第1期分を納付します。都道府県から送付される納税通知書に従って納付しましょう。
所得税の確定申告で事業所得を申告していれば、自動的に課税されます。事業内容によっては課税対象外となる場合があります。
8月
夏期は利用者の活動内容や職員の休暇取得により、運営状況が変動しやすい時期です。柔軟な対応が求められます。
夏季休暇中の利用者対応・作業内容の調整
夏季休暇期間中も利用者の支援体制を維持し、作業内容やスケジュールを調整します。職員のシフト管理も重要です。
事業所の稼働日数が減る場合、サービス提供実績や工賃・賃金に影響が出ることがあります。事前に利用者や保護者へ周知しましょう。
9月
秋は落ち着いて事業の運営状況を見直す良い機会です。特に報酬請求に関する確認は、事業の安定に直結します。
消費税の中間申告・納税(対象事業者のみ)
消費税の課税事業者で、前年度の消費税額が一定額を超えた場合、中間申告と納税が必要です。申告書は税務署から送付されます。
作業請負など課税売上が多い事業所は対象となることがあります。障害福祉サービス報酬は中間申告の対象外です。
障害福祉サービス報酬の請求状況確認
国保連への請求状況や入金状況を定期的に確認し、未入金や返戻がないかチェックします。加算要件の再確認も行いましょう。
加算要件の記録不備や請求ミスは、事業所の収益に直結します。サービス管理責任者と連携し、日々の記録を徹底しましょう。
10月
年末に向けて、社会保険や年末調整といった重要な人事・労務関連の事務作業が始まります。早めの準備が肝心です。
社会保険料の算定基礎届提出(対象事業所のみ)
従業員を雇用している場合、社会保険の標準報酬月額の見直しのため、算定基礎届を提出します。A型事業所の利用者も対象となる場合があります。
A型事業所の利用者は雇用契約に基づき賃金が支払われるため、社会保険の加入対象となる場合があります。加入条件を再確認しましょう。
年末調整の準備開始
従業員がいる場合、年末調整の準備を始めます。従業員からの各種控除証明書(生命保険料控除、地震保険料控除など)の回収を依頼しましょう。
A型事業所の利用者も年末調整の対象となります。正確な賃金計算と必要書類の回収を丁寧に行いましょう。
11月
年末調整の最終段階です。書類の不備は再提出の手間につながるため、丁寧な確認を心がけましょう。
個人事業税の第2期納付
前年分の所得に対する個人事業税の第2期分を納付します。納税通知書は7月に送付されたものと同じです。
事業の継続性を保つためにも、税金の納付は計画的に行いましょう。
年末調整書類の回収・確認
従業員から回収した年末調整に必要な書類(扶養控除等申告書、保険料控除申告書など)の記載内容を確認し、不備がないかチェックします。
A型事業所の利用者も対象となるため、個別の状況を丁寧に確認し、不明点は税理士に相談してください。
12月
事業年度の最終月です。年末調整や棚卸しといった年次業務を確実に完了させ、次年度に向けた準備を着実に進めましょう。
年末調整の実施
従業員の給与所得に対する所得税額を確定し、過不足を調整します。還付金や徴収額があれば、12月または翌年1月の給与で精算します。
A型事業所の利用者への賃金も年末調整の対象です。正確な賃金台帳に基づき、漏れなく処理しましょう。
棚卸しの実施
事業年度末に、販売目的で保有する商品や製品、仕掛品、原材料の在庫を数え、評価額を確定させます。B型事業所の作業材料も対象です。
利用者が製作する製品の原材料費や仕掛品は、期末棚卸資産として計上する必要があります。正確な利益計算のために重要です。
来年度の事業計画・予算策定
来年度の事業運営方針、利用者募集計画、職員配置、収支予算などを策定します。報酬改定の動向も考慮に入れましょう。
障害福祉サービス報酬改定の時期を考慮し、加算取得の可能性や運営コストの変化を予測した計画が重要です。
年間まとめ
就労継続支援A型・B型事業所の年間税務は、確定申告や消費税申告、法定調書提出といった一般の個人事業主共通の業務に加え、障害福祉サービス報酬の非課税処理、利用者への賃金・工賃の区分、送迎車両や作業材料の管理など、業界特有の注意点が多岐にわたります。日々の記帳と、各月の期限を意識した計画的な準備が、事業の安定運営には不可欠です。
確定申告に向けた準備スケジュール
売上・経費の帳簿整理と領収書・請求書の確認。特に障害福祉サービス報酬と課税売上を区分して集計し、インボイスの保存状況も確認しましょう。
固定資産台帳を確認し、減価償却費の計算準備を行います。送迎車両や訓練用設備などの取得価額、耐用年数を再確認しましょう。
A型事業所の賃金台帳、B型事業所の工賃支払記録を最終確認し、年末調整に必要な書類(扶養控除等申告書など)を従業員から回収します。
確定申告書と青色申告決算書の作成を開始します。不明な点があれば、この段階で税理士に相談してください。
確定申告書を提出し、所得税・消費税・個人事業税の納税を完了させます。提出期限の厳守を心がけましょう。
プロのアドバイス
- A型事業所の利用者への賃金は給与所得として源泉徴収・年末調整の対象ですが、B型事業所の利用者への工賃は原則非課税です。ただし、高額な場合は利用者が雑所得として確定申告する必要があるため、会計上の性質を明確に区別し、利用者への周知も徹底しましょう。
- 国や自治体から支払われる障害福祉サービス報酬は、消費税法上、非課税売上として処理します。作業請負や物品販売など、課税売上となる事業活動がある場合は、課税売上割合に応じて仕入れに係る消費税の控除額が変動するため、帳簿を区分して正確に記帳することが重要です。
- 利用者の送迎に用いる車両のガソリン代、修繕費、自動車保険料などは重要な経費ですが、事業主の私的利用分がある場合は家事按分が必要です。運行記録を詳細に残すことで、事業利用割合を明確にし、適切な経費計上を行いましょう。この経費を落とせるかは税理士に相談してください。
- B型事業所などで利用者が製作する製品の原材料費や仕掛品は、期末に棚卸資産として計上する必要があります。期末棚卸しを正確に行わないと、仕入高が過大計上され、適切な利益が算出されません。毎年、年末には必ず棚卸しを実施しましょう。
- インボイス制度への対応は、障害福祉サービス報酬自体は非課税のため直接的な影響は少ないですが、作業請負で一般企業と取引がある場合や、給食委託、送迎委託、作業材料の仕入れなど、課税事業者からの仕入れについては適格請求書の受領・保存が必須です。仕入れ先が適格請求書発行事業者か確認し、対応を怠らないようにしましょう。
免責事項:この情報は一般的な参考情報であり、個別の税務判断を提供するものではありません。具体的な税務上の判断については、税理士等の専門家にご相談ください。